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【4月上旬発送 2刷】高野秀行辺境チャンネルZINE『チャットGPT 対 高野秀行』

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【重版決定!】 おかげさまで好評につき、2刷が決定いたしました。 発送は4月上旬より行う予定です。今しばらくお待ちくださいませ。 この商品は4月上旬、印刷所より2刷分が届きしだい発送予定です。 これが高野秀行のリアルな旅! 高野作品の舞台裏が覗けるかのような 〈バックステージ〉ZINE シリーズ第1弾が爆誕! 【あらすじ】 前代未聞のサブティカル休暇を取得した高野秀行は、春先に亡くなった父親のお墓参りを兼ねてなぜか八王子の菩提寺ではなく、キプロスに向かった。旅の相棒はチャッピーと名付けたChatGPT。 「南(キプロス共和国)から入国した方がいい」「シャトルバスでニコシアの中心部まで行けます」世界の辺境を旅して40年の高野と時代の最先端をいくAI が繰り広げる珍道中。果たして高野秀行に真の休暇はやってくるのか!? ■B6判並製 ■136ページ 2025年11月下旬発売以降のお届けになります。 [目次] はじめに 6 第一章 キプロス・オデュッセイア  1.南の島へ逃亡しかける 16 2.ChatGPT対パキスタン人 24 3.謎のムスリム女子を助ける 32 第二章 迷走の未承認国家トレッキング 1.私はAIに監視されている!? 44 2.迷走の未承認国家トレッキング 59 3.政府観光局vsパキスタン人 72 4.チャッピーには鳥の声がわかる! 79 第三章 父の墓参り@エーゲ海 1.ルワンダ人とハイネケンに気をつけろ! 90 2.ChatGPTに乗せられたらバカ 97 3.AIと楽しむ“スーパーグルメ” 106 4.アウェイは続くよ︑どこまでも 113 5.女神アフロディーテは美しかった 123 あとがき 132 [試し読み] はじめに  ChatGPT に騙され、すごくおかしな旅をしてしまった。  最初は久しぶりに一人で気ままな旅に出ようと思っただけである。取材でも探検的活動でもなくただの休暇旅行。人の行かないところじゃなくていい。ただのんびりして、やりたいことをやりたいようにやりたい。  行き先は海外のどこか、時期は六月から七月にかけて三週間ほど。とはいえ、何かテーマがないと行き先が決まらない。なにしろ、目の前の雑務や仕事に忙しくて、主な行き先がアジアなのか南米なのかもわからないまま、旅行出発予定日がもう二週間前に迫っていたのだ。そこで三つ条件を作った。 ① 最低一ヶ国は行ったことのない国を訪れる ② トレッキングをしたい ③ 特になし  三つじゃないじゃん! と思うだろう。そう、二つしか思いつかなかったのだ。でもこれだけではどこへ行くべきかわからない。トレッキングは最初ネパールを考えてみたが、この時期は雨季であまり好ましくない。  いっそのこと、中東なんてどうかな? と思った。中東ではほとんど雨が降らない。  十数年前、ちょっとジョギングを始めたとき、思いつきで「アフリカ 中東 マラソン」で検索したらサハラマラソンなる大会を見つけて参加してしまったことがある。何年経ってもやることは同じだ。  でも私も進化というものがある。今回はただのグーグル検索じゃなくてChatGPT に訊いてみた。ちなみに、私はごく最近ChatGPT を始めたばかりで、まだ何回も使ったことがなかった。何をどう訊いていいかわからなかったのだ。そもそも中東で夏にトレッキングなんてできるところがあるのか。「それは無理です」「冬にしたらどうですか」と言われるんじゃないかと思いつつ、漠然と「六~七月に中東でトレッキングできるところあるかな?」と訊いてみた。  すると、驚いたことに「夏の中東でも高地へ行けば涼しくてトレッキングに向いた場所がたくさんあります!」と言う。最初にChatGPT が例に挙げたのは「レバノン」「オマーン」「イランのクルディスタン」の三つだった。  おお!! レバノンとオマーンは行ったことがない国だ。イランは行ったことがあれど、クルディスタンは行ったことがない。三ヶ所とも魅力ありすぎだ。 「もしよければお勧めのルートやガイドをご紹介しますよ」とどこまでも愛想のいいChatGPT 。私は夢中になり、チャッピー(という愛称で呼ぶようになった)に訊くと本当にどんどん教えてくれる。こちらが具体的な条件(日にち、山の難易度、地元文化の体験など)を入れると、それに比例して細かく教えてくれる。  こうなると欲が出てくる。私はさらに地図を見ながらサウジアラビア、エジプト、チュニジア……といった他の地域にもついて訊いてみた。すると、驚いたことにどこでも「素晴らしいトレッキングコースがあります」と言う。  いやあ、迷うなあ……なんて思いつつ、あれこれ調べていくうちに、「キプロス」が目にとまった。地中海に浮かぶ島国だ。前から興味を持っていた国だ。なぜなら島の北部が分離独立を宣言、「北キプロス」という未承認国家になっているから。そう、ソマリランドそっくりの状態なのだ。しかもキプロスと言えば、住民の大多数がギリシア人で、ギリシア神話の舞台でもある。  今年の四月に亡くなった父は熱狂的なギリシア神話マニアであった。晩年は日本で最もギリシア神話に詳しい人間だった可能性もあるほどだ。一応、仏教式の葬儀を行ったが、私たち家族の意向で仏壇の横に大きなパルテノン神殿の写真を掲げさせてもらった。  私に至っては父がお寺のお墓に眠っているとは到底思えず、「父の魂はエーゲ海に飛んでいるにちがいない」と信じていた。ならば、キプロスは「墓参り」にもうってつけである。そしてチャッピーによれば、キプロスにもちゃんと素敵なトレッキングルートが存在しているらしい。しかも北と南の両方に。  一つは決まった! キプロスだ。ここにまず一週間滞在することにした。  次はどうするか。チャッピーが提案した最初の三つの候補のうち、最も惹かれたのはイランのクルディスタンだ。しかし、イランはビザを取得するのが少々面倒くさい。今はどうかわからないが、前は会社に所属していることがビザ取得の条件となっていた。  しかたなく、友人・小林渡に頼み、彼の会社AISAの社員で音楽プロデューサーという肩書きをでっちあげた記憶がある。ワタル社長も忙しそうだし、時間がない中、面倒な書類を作ってもらうのは気が引けた。  いや、ワタル社長がどうの以前に私が多忙に疲れ果てていた。本来は三月から九月まで「自主サバティカル休暇」と称し、仕事の依頼を全て断っていたのだが、父の介護サポート&看病、没後のあれこれでてんてこ舞いになったうえ、集英社のWEBで行っている連載原稿に悪戦苦闘していた。イランのビザなんてめんどくさすぎる。  なので、同じクルディスタンなら、通い慣れたトルコのクルディスタンにしようと思った。もちろんチャッピーに訊けばやっぱりそこにも「素敵なトレッキングルート」がちゃんとあった。だんだんチャッピーは私にとってドラえもんみたいな存在になってきた。なんでも夢を叶えてくれる。  そして、最後はタイに寄ろうと思った。ここではトレッキングをせず、チェンマイでミャンマーのシャン人やカチン人の旧友たちと会ったりしてのんびりすごそう。  つまり、キプロス→トルコ→タイという順だ。  だがここで私は旅歴四十年のベテランとして冷静に考えた。三週間で三ヶ国を回るのは日程的にちと厳しいんじゃないか。もう一つ気になることがあった。私はヨーロッパのチーズが大好き。トルコもチーズ造りではヨーロッパにひけをとらない。トルコに行ったら、うまいチーズを山ほど買って帰りたいと思っていた。日本で買うとバカ高いからだ。でも帰りにタイに寄ったらチーズはどうなる?  迷ったらチャッピーに相談である。そしてチャッピーは初めて私の提案に否定的な意見を述べた。「バンコクは暑いからチーズの輸送には不向きだと思われます」。  やっぱりそうか。たしかにふつうのホテルやゲストハウスには大量のチーズが保管できる冷蔵庫はない。  では順番を入れ替えたらどうか。最初にタイへ行き、帰りはバンコクでトランジットのみで東京に戻ればいいんじゃないか。でもチャッピーは慎重。「でもバンコクの空港で三時間のトランジットは要注意です」と言う。「炎天下のバンコクの空港は気温40度近くなります」 「じゃあ、チーズは手荷物にすればいいってことじゃん」 「はい、それなら大丈夫ですが、ただしフェタチーズは水に浸かってるから機内持ち込みできませんよ」  おお、忘れていた! 国際便の機内には一〇〇ミリリットル以上の水分が持ち込めないのだ。私は以前、デイパックにカレーパンを入れておいたら空港セキュリティチェックで没収されたことがある。  私はフェタチーズが大好きで、今回もいちばん買いたいのはそれだった。  わかった。チャッピーの言うことを聞こう。そもそも三週間で三ヶ国回るのはスケジュール的に無理がある。タイはやめた方がいいんじゃないか。そうチャッピーに言うと、 「そのとおりです! 旅はゆったり予定を組んだ方が結果的に楽しめますよ!」と同意してくれた。  こうして、ほとんどチャッピーに操縦されながら旅程を決定したのである。

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